スポーツと催眠 2

スポーツと催眠 2

2021年12月6日

前回、ご紹介した1970年初版、長田一臣氏著「スポーツと催眠」は催眠術のノウハウ本ではなく自己催眠と他者催眠に関する理論書です。スポーツと催眠 1

橋口佳代子選手 「スポーツと催眠」から引用

日本催眠医学心理学会の長田氏が催眠技法を用いて、1960年代に活躍された 体操選手、橋口選手の不安や緊張を軽減し、精神的な弱さを克服していく過程を理論的にまとめた著書です。

他者催眠による施術過程も掲載されています。

―「さあ、これからおなかで大きく呼吸しましょう。ゆーっくり吸って徐々に吐きますよ。吐くときは吸うときの倍くらいの時間をかけてゆっくりと吐きましょう。」

―「不安を吐こう、恐怖心を、いらいらをすべて吐いてしまう、全部吐いてしまう。

―「はい、光を吸う、力を吸い込む、勇気が湧いてくる、おなかの底にじわじわ自信が湧き、漲ってくるのが分かるでしょう。迷いが出てゆく、不安がすっかり消えてゆきます。」(一部)

と催眠のノウハウを多少説明はしていますが、本書は催眠術を習得できるものではありません。

以下、これらも本書から抜粋引用しています。

「力を秘めているのだが、十分にそれを発揮できない精神的原因のあるものについてこそ催眠法自律訓練の効果は望みうるものである」

「人間が如何に小さいものであるか、そして人生が如何に短いものであるかを悟らせることによって観念させるのである。その上で小さく、短い人生ならいっちょう掛けたらどうだ、とアドバイスする」

「大鵬は31回優勝して柏戸はわずか数回しか優勝しませんでした。柏戸はつきあいの良い力士と言われ、大鵬が負けると必ず自分も負けるという傾向が強かった。これは柏戸が常に大鵬によって潜在的に支配されていることを意味している。体操でも一人が平均台から落下すると以後、幾人もの選手が連続して落下する現象がおこる」

「練習で挙げたものを試合で挙げるだけの話だ。僕は練習でも必ず挙げるが、それ以上ははじめから挙げようとは思わない。練習で挙がらないものは試合で挙げようなんて、だいたい図図しいことだ」重量挙げ、三宅義信選手

催眠技法の話だけでなくこの様に蘊蓄のある話も多数掲載されており、哲学書の様にも思えます。人間の意識が如何に身体能力に関わっているか、また催眠により筋力まで影響してしまうと長田氏は解説しています。

また他者催眠の場合、他人に身を任せるので催眠技法を熟知している信頼できる人物に依頼することが大事だと語っています。そりゃ、怪しい奴にはジジイでも身を任せたくありません。

只、自己催眠を身につけなくても自己暗示により技術力を上げる方法は私にも利用できそうです。それはよく言われる「イメージトレーニング」とか「メンタルリハーサル」と呼ばれるものです。

「心の中で自分の技術をイメージします。試合の初めから終わりまでの動き、あるいは一連の動きをリハーサルします。潜在意識には繰り返し描かれている視覚心象を実際の行動に移していこうとする傾向があります。」

さらに催眠技法を使うとより鮮明なイメージで潜在意識に深く刻み込むことができる様です。

最近、卓球サークルの練習相手が練習試合で私に仕掛けて来る戦術です。まあ常套手段ですが…😌。

①相手がフォア前に短いナックルサーブを出してきます。

②私は上半身を台上に入れ、ゆっくりしたナックルボールで返球します。(ナックルボールにはオーバーしないようにゆっくりスイングすると杉本コーチから以前ご指導頂きました。)

③相手はその球をバックハンドで強打し、こちらのバック深くに返球してきます。

④どうしても戻りが遅くなりのけ反ってしまい、ミスしてしまいます。

このパターンで何度もやられ負けてしまいます。常套手段ですが…。しつこい。😅

ゆっくりしたレシーブは相手にとって打ちごろの球になり強打されてしまいます。何とか相手のナックルを強打できるレシーブ方法はありませんか?と杉本氏にご指導をお願いしました。そして杉本氏から授かったこの対処法を何度も鮮明にイメージして「メンタルリハーサル」を行いました。

練習時間の少ないシニアにはメンタルリハーサルは有効かと思われます。

以上全く本の紹介になっておりませんが、詳しく内容をお知りになりたい方はご購入頂きご一読願います。わたくし、同時に購入した水谷隼氏著の「終わりなき戦略」より楽しく読めました。

結論、「あなたは水谷隼になーる、水谷隼になーる。」催眠技法を使っても本人が持っていない能力まで引き出せないとのこと。よって催眠術では水谷隼にはなれません。残念!(波田陽区)

丹阿弥清次

1955年生まれ。広告デザイン会社退社後、デザイン会社を起業して三十数年。卓球歴は大学以来40年の空白状態。還暦前に再挑戦。しかし奮闘努力の甲斐もなく今日も涙のボールが落ちる。

※批判的なコメントはご容赦願います。