貴族のスポーツ──卓球のマナー考

貴族のスポーツ──卓球のマナー考

2021年3月3日

(上の銅版画)ジョン・マナーズ・グランビー侯爵(1721-1770)、H.ロビンソン氏が制作し、1832年に銅版で印刷された物を私がパロディー化してしまいました。卓球がイングランドで発祥したのは19世紀後半ですからラケットとボールを持っているこの絵は嘘です。グランビーさん、ロビンソンさん、ごめんなさい。

卓球がイングランドで生まれた理由は、イングランドの天気が気まぐれで1日中晴れ間が続く日がなく、上流階級のテニス愛好家が室内でテニスを楽しめないものかと考えたからです。そして球はシャンパンのコルクの栓を丸くして、ラケットは葉巻の木箱の蓋を利用して食後の余興になった話は有名です。また当時の代表的なダイニングテーブルの大きさを元に卓球台のサイズが決められたと聞きます。サッカー、クリケット、ピンポン、バドミントン、ゴルフ、ポロ等、これらはすべてイングランドの上流階級の遊びです。厳密に言えばこれらのスポーツの発祥の地はインド、フランス、スコットランド、中国など諸説ありますが、イングランドがルールや道具を改良しスポーツとして確立した様です。当然の様に彼らは酒を嗜みながらプレイをし、またスポーツの後、クラブハウスで飲み交わしながら談話する、マナーの良いスポーツなの?と疑問ですが、多分「貴族=マナーが良い」と言うイメージが強く、私たちは誤解しているのかも知れません。当時の労働者階級は生活に追われ、スポーツどころではなかった筈です。

海外のスポーツが日本に輸入されるとベースボールは野球道、テーブルテニスは卓球道と精神もプレイの仕方も日本の文化と融合し独特なものに変化します。それは日本古来の武士道、柔剣道、神教、仏教また戦争中の精神主義などの影響が大きいと思います。

高校時代、お酒は未成年ですから当然飲めませんが、練習中は水を一滴も飲めませんでした。(糖尿や脳梗塞の既往症もありますから今ではこまめに水分補給しています。)また高校の先輩とラリーの練習時にネットインするとすぐに「すみません」と謝らなければなりませんでした。多球練習などない時代でしたからオーバーミスすると相手側の後方まで走って、球を取りに行った覚えもあります。もし謝らなければ、先輩に何をされるか分かりません😱。マラソン、うさぎ飛び、腕立て伏せ、腹筋?

試合でネットイン、エッジをした場合、相手選手に必ず謝ります。謝る事が癖になって、こちらがミスして相手の得点になっているのに謝ってしまいます。悲しい習性です。

毎週日曜の近隣の卓球場でサークルの中高年の方と練習中、ネットイン、エッジをしても謝らないので優しく理由を聞くと、試合中のネットイン、エッジは謝るけど練習時は謝らないと言います。そんな理屈があるのかと不思議に思い、他の多くの方にも質問致しました。結果、学生時代からの卓球経験者の殆どが、練習時も試合時も謝ります。社会人になってから卓球を始めた人は練習時も試合時も全く謝らないか、両方とも謝るかどちらかでした。

若い中高校生も謝らない方が目に付きます。まして老若男女問わず、ネットインやエッジで得点すると大喜びする方もいます。そんな対戦相手を見ると誰でも苛つくと思います。嬉しい気持ちは理解できますが、ここは本心を隠して、残念な表情ですみませんと一言言って頂いた方がお互い気持ちよくプレイ出来るのではないでしょうか。

隣町の卓球サークルの練習時、ある叔母さまにこのようなお話しを致しましたら「そんなことに目くじらを立てちゃダメよ。もう時代が違うんだから」と大きな声で諌められました。うーん、物わかりの良さそうな叔母さまの意見に聞こえますが、やはりマナーの良くない方には注意してあげるのが当然のことと思います。今の所、謝らないのはフォルトではないにせよバッドマナーとされているのですから。襖は膝を付いて開けろとか、三つ指付いてご主人様をお迎えしろとか申しているのではありません。マナーを無視してプレイする方は人格、品位を疑われ、決して尊ばれることなく、他人の目にも見苦しく映ってしまうからです。最近では日本人も人差し指を立てて謝意を表すサインをしますが、伊藤美誠選手がネットインかエッジをした時、外国選手に試合中「すみません」と日本語で謝っていました。外人の解説者が礼儀正しいと目に映った様で可愛いと褒め称えていました。ホッコリ致します😊。

また最近、謝る必要はないのじゃないかと言う風潮もあります。ネットイン、エッジをしたらノーカウントにしてサービスからやり直すなんて意見もあります。 

先日も近隣の卓球場で練習がありましたが、最近コロナ下にも関わらず会員以外のお客が多くなっております。若い方は殆どマスクをしておりません。オヤジたちは基礎疾患がありますから気を付けなければなりません。丁重にお願いしてマスクを着用して頂きました。密閉された卓球場ですからマスクをするのもマナーの一つです。

その他、私が過去に教わった卓球のマナーを列挙致します。(私個人の経験から申して上げておりますので適当にお読み下さい。)

●ラリーはリズムよく相手コートの一定の位置に思いやりを持って返球してあげます。卓球はミスを誘う競技ですが、ラリー中は相手が打ちやすい球を送ってあげます。行成りスマッシュを打つなど言語道断です。ラリーはその日の球の弾み具合、球の引っ掛かり具合、その時の個人の調子などを見極めるための練習です。

●三球目の練習はまず下回転サーブを出し、それをツッツキで返球してもらいドライブまたは角度打ち等で打ち返します。基本的にサーブは一種類に絞ります。この時相手は三球目の練習者の打ちやすい場所に返球してあげます。あくまで三球目は練習者の調子を上げるための練習です。三球目の練習者がハードルを上げて練習したいのであれば、相手にフォア、バック織り交ぜて返球してほしいと要望すれば実戦に近づけると思います。三球目の練習者が色々なサーブを出したり、レシーブをする相手がフリックや払いをしたいのであればオールラウンドの練習を希望すれば良いと思います。(たまに三球目とオールラウンドの意味や違いが分かっていない方がいらっしゃいます。三球目の練習をお願いしてるのに払って来るし…😭。)

●他人が練習している時は大きな声で雑談しないように気を付けます。卓球の技術のお話しを大きな声で延々2時間されている中年の方達。奇声を上げながら練習試合をしている中学生。しかもマスクなし。「ウォー!」「オーシ!」お願いですからもう少し声を抑えて頂けますか?多少の気合いを入れる声なら理解できますが、余りに大きい声量は近くで練習していると吃驚してしまいます。卓球は集中しなければ良いプレイができません。またラリーをしながら雑談をしている高校生がいました。「昨日のテスト出来た?」「あんなの出来ねえよ。」「あいつのYouTubeみた?」「まだ見てねえ。」「結構笑えるよ。」ずーっと喋っています。何のため練習に来ているのか不思議です。友人とお喋りしながら卓球を楽しむのも若い世代のライフスタイルなのかもしれません。卓球バーでお酒を飲みながら、しゃぶしゃぶ屋でしゃぶしゃぶを食べながら卓球を楽しめるお店もあります。コロナが収まったらまた伺いたいと思います。卓球の楽しみ方も確かに時代と共に変化しているのでしょう。

東京・蔵前、隅田川のとなりに建つスカイツリーの見えるMIRRORビルの4Fの隠れ家的なバーです。窓一面のリバーサイドビューを眺めながら軽くおいしいお酒を一杯。た…
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オヤジの古い考え方ですが、日本の文化、外国の文化など関係なくスポーツのマナーは未来永劫、普遍的なものであり続けて欲しいと思います。あくまで個人的な意見です。

丹阿弥清次

1955年生まれ。広告デザイン会社退社後、デザイン会社を起業して三十数年。卓球歴は大学以来40年の空白状態。還暦前に再挑戦。しかし奮闘努力の甲斐もなく今日も涙のボールが落ちる。

※批判的なコメントはご容赦願います。